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==  考察 ==

かぐや姫の物語

―お迎えが来た時に何を想う

 この作品の大きな魅力はアニメを絵画として鑑賞できる稀有な体験でした。誇張によって字面通りのコミカルな臨場感を描くアニメで、あえてしつこいまでに筆の動きとわびさびの高みを目指したというだけで、この作品は大きな価値があります。空が青くないというのは日本画では当たり前なのですが、映画の画面で塗りのない余白の美は味気なく見えてしまう可能性もあります。しかし、まったく問題ありません。それはそれは見事に日本人の心がノスタルジーな里の風景を引き出せるように「画」が出来上がっていました。その懐かしさは現代の育ちにや体験には関係ありません。いつだったかの今は昔に生きた自分が確かに見た緑色を思い出すのです。

 「ホーホケキョ となりの山田くん」以来、14年ぶりの作品ということです。高畑功作品の集大成と言っても過言ではありません。では、まず初めに監督の処女のとらえ方の話をします。なぜそこから始まるのか。かぐや姫それ自体が処女性と深い関わりがあるからという大義名分がありますが、私はジブリを支えた二人の巨匠は二人ともこじらせ処女好きだと見ています。聖娼の考え方をすると、はやおさんの方は大いなる母を併せ持つ聖女を、いさおさんは娼婦的なニンフェットを求めているというのが私の所感です。ただ、お二人ともアイデアは神域なのにやはり脚本がどうもこうもにっちもさっちもで、特にこの作品ではナレーションの統一感のなさは残念でなりません。日本最古の誰しも読んだことのあるお話ですから、当然時代考証の目で見て批判の形に口が曲がりやすいのだけれど、その点に関してはもう少しあと一歩、テーマに沿った改変があってもバランスは崩れないのでは、と物足りなさを感じました。

 フェミニスト映画としてこの作品を鑑賞する方が多いそうですが、この作品はただ女性解放の物語と考えるのは良くないと思います。「かぐや姫の生活が息苦しく女性役割を押し付けているなんてひどい」という印象付けが多くみられましたが、当時の価値観では当たり前のことを求められているだけです。現代で例えるならかぐや姫の望んでいる生活は常時すっぴんで坊主にジャージで生活をするようなものです。当たり前の父親だとしたら心配は当然のことです。そのことを頭に入れて見てみると、かぐや姫のやっていることはある意味親不孝ともとれる行動です。それでも母親は温かく支援するというのは今にもしばしば見られる姿勢ですね。帝の描写の故意的な様子を感じると、これぞ素晴らしいフェミニスト映画だとは言いがたいです。女尊男卑の映画は時代の流れとして売れる要素がたんまりあるのですが、かぐや姫の物語はそういう次元の女上げ男下げではなく、両性のどうしようもない側面とともに人生について語っているのだと思います。

 個人的な好みポイントは捨て丸とかぐや姫が駆け落ちトリップする場面です。月は女性の象徴です。それに見られて罪悪感を覚えるということは、それは実的な睦みあいがあったかは別として、ちょっとそれそれしてしまったと捉えても良いでしょうか。男女が池に落ちていく描写です、そういうことをされると、フロイト先生でなくても爆笑しながらアレと思いますよね。無意識に落ちていった、何て言い訳はさせません。かぐや姫の澪に沈んだのです、捨て丸。一夜でもかぐや姫は満たされたのでしょう。そして、捨て丸はわが子を見るとふと我にかえるのです。ここではかぐや姫が大人になれない所以も表しているようでした。

 まとめに、キャッチコピーはかぐや姫のおかした罪と罰、ああ無情でした。これをどちらも補完する形の解説を述べます。「まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ」という子供たちの歌、口車に乗せられそうになるかぐや姫、浮気をするのに子供と妻のもとに父帰る捨て丸、父の母の想い等々……それらを一息に無情な超自然がさらっていく。話の筋としての「罪と罰」の説明は付け加えられていますが、そもそも人間が生まれてきて穢れを知り、最終的に向こうの国に戻るというのは人生の形そのものです。神様は女性は穢れを背負うようにつくりました。生理の血が汚いとか、劣っているとか、そういう話ではありません。すべてを呑み込み愛し受け入れることができる反面として、女性はありふれて穢れを持つのです。最後の時に人を自分を生を愛せる素質の一つに女性の業は存在するのではないかと、私がやってきた場所といずれ到る場所を考えさせる残酷で温かな映画でした。

以上!
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